【鉄印】南阿蘇鉄道・トロッコゆうすげ号
朝9時、熊本駅。
熊本駅前は再開発中で、こじんまりとした仮設の電鉄乗り場に列ができている。
南阿蘇鉄道はおそらく、現在、駅で鉄印を発行している第3セクター路線のうち、最も到達難易度が高い路線。
鉄印の記帳を受けるには終点の高森駅まで行く必要があるが、
JRとの接続駅である立野から中松までは、熊本地震の被害で長期不通となっていて、列車は中松-高森間のみ運行。
平日は普通列車3往復、土日祝は普通列車1往復+全席指定のトロッコ列車4往復。
このトロッコ列車は、高森駅で指定席券を買わなければ乗れないのだが、なかなかの人気で週末は早々に売り切れてしまうこともあるとか。
不通区間の代行輸送は行われていないため、別ルートを探さなければ。
公共交通機関でのアクセスを調べると、産交バスの「快速たかもり号」が、
熊本駅から阿蘇くまもと空港を経由して、高森までを2時間で結んでいることが分かった。
熊本駅前1番バス乗り場の10mくらい先にある簡素な丸いバス停標が、空港行バスや快速たかもり号の乗車場所。
快速たかもり号、到着。
始発の西部車庫からは誰も乗っておらず、空のバスがやってきた。
熊本駅からの乗客は私を含め2名。
桜町バスターミナルあたりから、乗ってくる人が増えてきた。
大きいスーツケースを持っている。空港へ行く人たちのようだ。
案の定、阿蘇くまもと空港でほとんど降りて、乗客は3人だけになった。
ひとり、ふたりと降りていき、白川水源入口でついに自分1人になる。
窓ガラスの存在を感じさせない雄大な景色。ここで既に旅のピークを迎えたような高揚感を味わってしまう。
11:51 高森中央着
熊本からの運賃1030円を支払い、バスを降りると目の前にあるのは観光案内所。
旅の情報は現地調達の私です。
観光案内所は貴重な情報源。もちろん寄ります。
目に入ってきたのはこれ。
引いてみましょう。
窓口で高森駅までの道を尋ねる。徒歩5分くらいとの事。
ついでにパンフレットコーナーをウロウロしていると……
「南阿蘇ゆるっとバス」というのがあり、肥後大津まで直通。しかも1時間かからない。
中松駅を経由しているので、中松までトロッコ列車に乗って、駅前からゆるっとバスに乗れそう。
今日はこの後大分に向かうのだ。快速たかもり号で熊本まで戻ったら遠回りなのだ。
こういう掘り出し情報があるから観光案内所はやめられんのよ。
帰りのルートが決まったところで、高森駅へ。
この駅舎は建替が決まっており、2022年頃に新駅舎が使用開始となるらしい。
まだまだ現役で使える建物なのだが、この辺りも再開発でかなり様子が変わるようだ。
この温かみのあるログハウス、駅舎が無理なら別の用途でも残してくれないだろうか……。
しっかり目に焼き付けておこう。
待合スペースの売店と、所狭しと並んだグッズと……
「ONE PIECE」尾田先生の応援メッセージや、田中真弓さん寄贈のコミックス
たくさんの色紙と、
ラオウ。
背後には写真展。盛りだくさん。
待合室にある南阿蘇鉄道の駅名ガチャは駅員さんの企画。中を覗くと、「当たり」と書かれた紙が入っているカプセルもある。
駅員さんいわく「極めてローカルな当たりです」ちょっとしたグッズとか、ソフトクリームなどが当たるらしい。
駅名板ストラップのガチャ200円を引いてみた。
駅前には、旧国鉄高森線のSL C12 241が静態保存されている。
このSLも駅前再整備のため直方に譲渡されるそうだ。ここで見られるのはあと少し。
さて、お目当てのトロッコゆうすげ号がやってきました。
発車前には、話し上手な車掌さんがユーモアあふれる諸注意や車両の紹介をしてくれ、車内の乗客からも時折笑いが起こる。
「貨物車だったので乗り心地は良くない」と正直におっしゃっていて、
その乗り心地の良くない貨物車にこうしてわざわざ乗る道楽のなんと酔狂なことよ。
1330 高森発。
中松行は、進行方向右側に阿蘇山がある。
私の席は左側だったけど、
ドンマイ大丈夫、左車窓にも白川水源の入口や、吉田城御献上汲場など見所はあります。
阿蘇家の重臣・吉田主水頭(よしだもんどのかみ)の居城である吉田城の御献上汲場。
今でも豊富に水が湧出しているそう。
1351 終点・中松着。
なんだここは!
と思ったら、トイレにヒントが。
どうやら特務機関の基地らしい。
駅舎内には「ひみつ基地ゴン」というカフェもあるよ。
駅を出てすぐの通り沿いに、ゆるっとバスのバス停があった。
予定通り14:15発に乗車。
14:43 立野駅着 300円
バスは肥後大津まで行くけれど、立野で降りる。
熊本地震と豪雨で甚大な被害を受けた立野駅は、今は駅舎がない。
2023年夏の南阿蘇鉄道全線復旧に合わせ、新駅舎が建設されるようだ。
こちらは8月8日に全線復旧したJR豊肥本線。
駅舎はなく、ホームのみで営業しており、近距離きっぷの自動券売機がある。
「立野」の由来は「立てぬ」の訛りと言われているそうで、健磐龍命の豪快さがうかがえるエピソード。
隣の赤水駅との間には日本最大の三段式スイッチバックがある。
ホームから見たスイッチバック線。
列車を待つ間、高森駅の駅員さんがおススメしてくれた、駅前の「ニコニコ饅頭」さんへ。
ご家族で和気あいあいとお饅頭を包んでいるところへお邪魔しました。
駅舎のない立野駅。駅スタンプはこちらの店内にありました。
まるで、駅舎が戻ってくるまでの間、代わりにこの地を訪れる人の拠り所になってくれているよう。
白くてふわふわのお饅頭は、軽くていくらでも入ってしまう。
来ました、九州横断特急。
これに乗ってスイッチバックを楽しみつつ、大分へ向かいます。
(2020.9.19)