京都丹後鉄道乗りつぶし&天橋立サイクリング

ちりとてちん杯女性落語大会・決勝の観戦後、私は上り方面の小浜線に乗って、若狭湾を眺めながら西へと向かった。
台風17号は、夜あたりに関西に接近するらしい。嵐の前だからか、小浜を出る時に降っていた雨も今は止んでいる。海も煙っているが静かだ。

 

呑み歩きたい街・東舞鶴

小浜線の終点、東舞鶴着。
JR西日本の日本海側では自動改札は普及しておらず、ここ東舞鶴も有人改札だ。
一昨日、米原で高速バスを降りてからはずっとJRでの移動だが、乗降した駅で自動改札があったのは米原と敦賀のみ。
しかしそれも、北陸新幹線が延伸したら変わってしまうのだろう。
改札できっぷを見せて、途中下車印を押してもらった。

東舞鶴駅 改札

 

駅の北口側にはかなり広範囲にわたる商店街がある。宿泊先は駅からかなり離れていたから、商店街を突っ切ってひたすら歩いた。
そうしたらまあ、良さげな居酒屋さんがあるわあるわ・・・。思わずふらりと入りたくなる店が沢山ある。

旅先で美味いものを食べようと思って期待に胸を膨らませても、不慣れな土地では叶わないことも多い。駅や宿泊施設があるエリアと繁華街が遠く離れていることもあるし、駅に着いたらどこも閉店後でコンビニしか開いてないなんてことも度々起きる。
だけどここ東舞鶴は、歩いていると次々とイイ感じの居酒屋さんが目に飛び込んでくる。豊作だ。
しかも、日曜の夜なのに、開いている。

ハシゴしたいのはやまやまだが、雨や風が強くなる前に帰りたかったので、1軒だけお邪魔して、さわらの塩焼きを頂いた。
若狭湾で獲れたという鰆は、身が柔らかくしっとりとして美味しい。

さわらの塩焼き

 

京都丹後鉄道・宮舞線で天橋立へ

翌朝は、京都丹後鉄道に乗るため、西舞鶴に向かう。

西舞鶴も有人改札だ。ここで京都丹後鉄道に乗り換えるため、改札を出る。
ここでも途中下車印を押して頂いた。

京都丹後鉄道の窓口で、乗りつぶしのためのきっぷを買う。
全区間乗り降り自由のフリーきっぷには、1人用がない。
「大人1人とこども(幼児・小児)1人」用なのだ。もちろん、大人1人で使っても良い。
全線乗りつぶせば十分に元は取れているけれど、小児を同伴していないので、きっぷの本来の効力のうち0.5人分くらいをもて余していることになる。勿体ないなぁと思ってしまう。人間の性だ。

本日購入したのは「こまねこきっぷ」。1800円で1日全区間乗り放題だ。
9/8に開催された「こまねこまつり」というイベントに合わせて発売された、8/17〜9/30までの期間限定きっぷ。
丹後ちりめんの特別仕様のきっぷだ。

こまねこきっぷ

 

「家族お出かけきっぷ」というフリーきっぷも通年発売されている。こちらも大人1人とこども1人用。利用日が土休日に限られるが、価格的にはこちらをネット予約すれば1500円と、もっとも安い(2019年9月30日まで)。
今回は、期間限定の誘惑に負けて、敢えてこまねこきっぷを選択。

 

京都丹後鉄道 西舞鶴駅 改札

京都丹後鉄道は台風17号接近に伴う強風の影響で若干遅れていた。
窓口で運行状況について尋ねると、福知山へ向かう宮福線は、列車の到着が20分ほど遅れているようだ。
ここは、改札に掲示されている発車案内も電光掲示板ではなくボードなので、発車時刻と行先しか表示されていない。
遅延情報を入手するには駅員さんに直接尋ねるしかなく、窓口の駅員さんは乗客対応で忙しそうだった。
そんな中で、発車案内のボードの時刻も駅員さんが手作業で変えなければならない。今日のような遅延発生時には負担が大きそうだ。
だが、怒ったり騒いだりパニックになっているお客さんは見当たらなかった。一体何分遅れているのか定かではないが、とにかく列車が到着しないことには発車しない。来ないものは仕方ない、という感じで皆、粛々と列車の到着を待っている。

宮福線の発車後、少し遅れて豊岡行が入ってきた。西舞鶴から宮津までは、宮舞線。宮津から豊岡までは宮豊線。
こちらは乗客を乗せるとすぐに発車し、大きな遅れはなかった。

西舞鶴 0839 → 天橋立 0920 /京都丹後鉄道 宮舞線 与謝野行
「丹後ゆめ列車Ⅱ」という愛称がついたKTR709のラッピング車両。
派手な色づかいでリアルな蟹が描かれている。

丹後のゆめ2

 

天橋立・砂州サイクリングと股のぞき

9:20 天橋立着。

天橋立駅ホーム

天橋立駅ホーム

ノスタルジックな木造のホームに降り立ち、跨線橋を渡る。
改札を出るとそこは突然、近代的な「観光拠点の駅」になる。

天橋立駅 駅舎内

天橋立駅は、2000年に大阪駅・京都駅などとともに「第一回近畿の駅百選」に選ばれている。
その後、2015年に駅舎の改装と駅前広場の整備が行われ、今の姿になった。

白砂青松を模した駅前広場に、伊根の「舟屋」を模した和風建築の駅舎が建っている。

天橋立駅 駅舎

 

日本三景のひとつである天橋立は、宮津湾に突き出た約3.6kmの砂嘴だ。
歩いて渡ると片道約50分。自転車ならば20分。
台風は既に通り過ぎたらしく、良く晴れているのでレンタサイクルを借りることにした。

観光案内所でもらったマップを見ると、自転車のアイコンがあちこちに付いている。レンタサイクルは豊富にあるようだ。
地図を頼りに何軒か覗いてみたところ、店によって借りられる時間や値段が違うらしいので、自分の用途に合ったお店を探すのが良さそうだ。
基本的には借りた店に戻って返すことになるが、遊覧船乗り場で借りると、対岸の乗り場で返却して船で戻ってくる事もできると観光案内所の方が教えてくれた。

自転車を借りて砂州へと漕ぎ出す。
天橋立は「海の京都」と呼ばれ、高所から見下ろすと海の上を龍が昇っているように見える風景が有名だが、砂州を渡っている時は長い長い松林の中をサイクリングしている感覚。
松の間から見える海は青く、砂浜は白い。

レンタサイクル

 

対岸には天橋立ケーブルカーの府中駅があり、「股のぞき」で有名なビュースポット、笠松公園まで運んでくれる。
きっぷは往復660円(2019年9月現在)。
併設されているリフトとの共通券となっており、リフト営業時は片道ケーブルカー、片道リフトと使い分けることもできる。
リフトは、冬期を除いた3月~11月に運行。天気のいい日はリフトでも気持ちがいいだろう。この日は強風により運休となっていた。

ケーブルカー 府中駅

ケーブルカーは1時間に4本。毎時00、15、30、45分と15分おきに発車する。
駅は「府中」と「笠松」のみで、所要時間は4分だ。

ケーブルカーを降りて外へ出ると、ガイドブック等で知っているあの「天橋立」の風景が広がっている。

股のぞきってどこでやるんだろう・・・と思っていたが、ご親切にも「股のぞき台」があるのだった。

股のぞき台

ここに仁王立ちして股のぞき。写真を撮ってみたが、正位置で見るのと何ら変わりない。当たり前か。
だけど、実際にやってみると、股の奥行で空間が広がって、まるで龍が天から降ってきたような迫力ある姿を見ることができる。
これは、やってみないと分からない。

笠松公園では「かわらけ投げ」の体験もできる。
かわらけ投げ

落語「愛宕山」で旦那や一八が興じていた、あれだ。
かわらけ(素焼きの土器)を投げて輪っかに通すと願いが叶うという。

下りケーブルカー。上ってきた時よりは空いている。
見下ろすと、はるか下方に府中駅を発車して上ってくるケーブルカーが見えた。

ケーブルカー

下から上ってくるケーブルカー

 

笠松公園から見た昇り龍を再び渡って駅へと戻る。
滞在2時間の間に気温が上がってきて、日差しが強く、夏日となった。空と砂浜のコントラストが美しい。

天橋立

 

宮豊線で豊岡へ

天橋立駅へ戻ってくると、ホームに「うみやまむすび」が停車している。

うみやまむすび

キハ40をベースに宝箱を模したデザインを施した観光列車。
2019年7月13日(土)から9月29日(日)まで、臨時快速「城崎・天橋立ダイレクト」として運行されている。

写真を撮影した後、普通の列車に乗り込む。
目が覚めるような鮮やかなブルー。これでも、今日見た中では大人しいデザインだ。

KTR802

天橋立 1133 → 豊岡 1248 /京都丹後鉄道 宮豊線
KTR802 1両編成 転換クロスシート

豊岡駅

1時間強で豊岡着。
豊岡ではどこも寄らずに折り返すだけだけれど、12分しかない。
とにかくトイレに行っておかねばならない。京都丹後鉄道の車両にはトイレがないのだ。
改札を出てトイレを探す。トイレはJRの駅に向かう途中にあった。
無事に用を足した後、すぐ側のJR豊岡駅のキオスクを覗く。
ここでは兵庫県の駅弁が手に入るのでぜひとも寄りたかった。ゆっくり悩んで選ぶ時間がないので直感で決めた。

「城崎名物 かにめしとすきやき弁当」税込1200円。
紐を引っ張る加熱式だ。
これは帰りの東海道新幹線内で頂いたが、たいへんに当たりだった。

豊岡 1300 → 天橋立 1418 /京都丹後鉄道 宮豊線 西舞鶴行
乗ってきた列車で折り返す。転換クロスシートは、進行方向に向けて回転されている。

来た道を戻っているだけなのだけれど、駅舎がなく山の中にホームが孤立するかぶと山駅や、ホーム足湯のある夕日ヶ浦木津温泉駅など特徴のある駅と、車窓から臨む阿蘇海を眺めていたらあっという間だった。

車窓

 

宮福線・特急はしだてに乗車

本日3度目の天橋立駅。
ホームを「丹後の海」が通過していく。

丹後の海

 

京都丹後鉄道 宮舞線・宮豊線を乗りつぶし、残るはあと1路線、宮津―福知山を結ぶ宮福線。

せっかく全線乗りつぶすのだから、どこかで特急列車にも乗りたいと思っていたので、最後にこの路線で乗ることにした。JR山陰本線に乗り入れて京都まで直通するので、このあと東京まで帰るのにも丁度いい。

天橋立 1455 → 京都 1707 / 特急はしだて6号 京都行
ホームに止まっているのは、287系4両編成。

特急はしだて

1号車を前に後ろ向きで発車し、次の宮津駅で進行方向が変わって4号車が先頭になる。
さらに福知山では、4号車の前に5〜7号車を連結し、7両編成となる。
15:35 福知山駅ホームに入線。接続作業が行われ、15:38にドアが開く。
停車ホームは京都丹後鉄道ではなく、JRのホーム1番線だ。

綾部を過ぎると左手に由良川が見える。ここの区間、山陰本線の普通列車はいつも混んでいたので、ゆっくり車窓を見るのは初めてかもしれない。

17:07 京都駅31番線に到着。
隣のホームにハローキティはるかが停車していた。

ハローキティはるか

京都まで来ると、先ほどまでの旅気分からすっかり現実に戻った。人がやたら多くせわしないのと、東京までの新幹線が通っていてここからはどこにも寄らず帰京できてしまうことから、もう旅が終わったような気分になった。

新幹線改札を通る。東海道新幹線ホームへのエスカレーターでは皆、右側を空けていた。
エスカレーターの右側を空けるのか左側を空けるのか、境界線はどこか、なんて話がよく議論されているけれど、そもそもエスカレーターで片側を空けるなんて、東京や大阪などの一部の大都市でしかやらない事だ。
ここは大阪に近いから左かと思っていたら右側が空いていたのでおや?と思ったけれど、それは東海道新幹線の東京方面行ホームだからかもしれない。もしかして新大阪方面行のホームエスカレーターは左側が空いてるなんてこともあるかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えていて、確認してくるのを忘れた。

京都 1732 → 東京 2010 / ひかり530号 東京行
N700系 16両編成

車内で、豊岡で買った駅弁を開く。

かにめしとすきやき弁当

かにめしとすき焼きが半分ずつ

「城崎名物 かにめしとすきやき弁当」
まずは紐を引っ張り、スチームが出るのを眺めて5〜6分待つ。
かにめしとすき焼きが半分ずつ。具材も豪華だけれど、すき焼きはつゆが染み込んだご飯、かにめしは蟹みそと海苔のご飯と、お米にも変化をつけてて美味しい。大当たりだった。

(2019.9.23)