一畑電車乗車記

山陰本線・快速アクアライナーで起伏に富んだ車窓を眺めつつ、昼前に出雲市駅に着いた。

出雲大社を模したエントランス

出雲大社を模したJR出雲市駅の北口エントランス

今日の一番の目的は、出雲市からサンライズ出雲に乗ること・・・であるが、それまでの時間を利用して一畑電車に乗ることにした。
半日たっぷりあるので、全線乗りつぶしつつ、出雲大社に行ってみようと思う。

電鉄出雲市駅から出発

電鉄出雲市駅は、JR出雲市駅・北口を出て右手、ショッピングプラザ「アトネスいずも」の先にある。

電鉄出雲市駅までの道

乗車券は待合室の券売機で購入することができるが、終点まで往復するつもりなので窓口で一日乗車券(1500円)を購入。
版画調のきっぷに今日の日付のスタンプが押される。

一畑電車は列車ごとに開札が行われるので、待合室でしばし待つ。12:10頃、開札。
電鉄出雲市 改札

 

一日乗車券は、日付が入っているので見せるだけで改札を通ることができるが、記念に入鋏してもらう。

一畑電車 フリー乗車券

電鉄出雲市 1218 → 川跡 1226 /北松江線 普通 松江しんじ湖温泉行
車両は平成29年3月にデビューした新造車両のデハ7002。

車体には青のストライプで宍道湖が描かれている。
片側ボックスシート、片側ロングシートが格子状に配置されたセミクロスシートの車両だ。

デハ7002

デハ7002 車内

いきなり快適な車両の快適な席をゲットしてしまったのでこのまま終点まで行きたい気もしたが、当初の計画通り、先に出雲大社から回ることにした。

ご縁電車に乗って

あっという間に川跡着。ここで出雲大社前行に乗り換え。

川跡 1230 → 出雲大社前 1241 /大社線 普通 出雲大社前行
続いてやってきたのはご縁電車しまねっこ号!
元京王電鉄の車両、デハ2104・2114の2両編成。1960年代製造。

※2019年8月追記
ご縁列車しまねっこ号(2104・2114号)は、2019年8月15日の運用をもってラッピング終了となりました。

しまねっこ号 外観・車内

ピンクを基調とした車内。1つだけ紛れ込んでいるハート形のつり革。
ロングシートのあちらとこちらを結ぶ、「ご縁あみだくじ」という床ペイント。
かわいい。確かにかわいい。
かわいいのだが、ここまでラブリーチャーミーな仕様だったとは。
国内外からのお客様でそこそこに混んでいる車内。このあみだくじは一体どういう時に活躍するのか。

高浜駅を出ると左手に粟津稲荷神社の鳥居が見えてくる。フォトジェニックなスポットだけど、カメラを構えてみたらあっという間に通り過ぎてブレた。
奥に見えるは一際目を引く出雲ドーム。日本最初の木造ドームであり、1992年の建造当時は日本最大の木造建築でもあった。
蛇の目傘をイメージしてデザインされたということを後で読んで知ったが、車窓から見たそれは蒸し器に見えた。さらに、蒸し器からの連想で肉まんのようにも見えてきた。お腹が減っていたのだろう。
田んぼの中に唐突にこれが現れるのだからなかなかの珍風景だが、内部から見上げた骨組みはきっと美しいだろう。

一畑電車車窓から見る出雲ドーム

出雲大社と旧大社駅

わずか10分ほどで電鉄出雲大社前駅に到着。
JR出雲市駅で出雲大社を模した大社造のエントランスを見た後だったので、こちらもそういうのを想像していたのだが、タイルとステンドグラスの洋風建築で少し面食らった。思ってたのとだいぶ違う。

出雲大社前駅 外観出雲大社前駅 駅舎内

神門通りを通り抜けて出雲大社へ。
広大な敷地の中をゆるく下る参道を歩いていく。

出雲大社 参道

本殿に近づくにつれ人が多くなり、列のようになってゆく。
人が密集し、進みが緩慢になると周辺のグループの会話がバンバン耳に飛び込んでくる。
縁結びの神様というだけあり、なかなかパワフルな野望をお持ちの方や、かなり混み入った状況の方など、小耳にはさむ情報量だけでもお腹いっぱいだ。みんな、善きところに収まりますようにと心の中で思った。
私自身は具体的な願望があったわけではないので、今、自分の周りで理解者となってくれているすべての方々とのご縁に感謝して本殿をあとにした。

 

鳩

じゃれているハト

 

出雲大社に参拝後は、参道を南へ南へ。
大鳥居を出て宇迦橋を渡り、さらに南へ。
徒歩15分程度、ちょっと不安になった頃にやっとたどり着く。

旧大社駅 外観

JR大社線・旧大社駅。
明治45年、国鉄大社線出雲今市駅―大社駅間が開通。出雲大社への参拝客が前年の3倍以上に増大したという。
その後、平成2年にJR大社線が廃止されるまでの78年間、出雲大社門前町の玄関口だった駅だ。

今残る駅舎は大正13年に改築されたもの。
駅舎内は高い天井に据え付けられた和風シャンデリアなど、大正ロマンの空気が漂う。

旧大社駅 内部

旧大社駅 内部

旧大社駅 内部

 

廃止当時の発車時刻表。
「記事」の欄には乗り継ぎ列車が記載されている。

当時の発車時刻表

旧大社駅 ホーム

旧大社駅 精算所

 

ホームに展示されたD51-774。

D51774

 

通路の蓋にもウサギが描かれている。

蓋に描かれたウサギ

 

ずらりと並んだ団体用の屋外改札口は往時の賑わいを彷彿とさせる。

屋外改札口

道の駅で味わう出雲そば

電鉄出雲大社前駅へ戻る道すがら、「道の駅 大社ご縁広場」に立ち寄る。

道の駅 大社ご縁広場 外観

まず目に入ってきたのが温泉スタンド。たった100円で自宅で出雲の湯が楽しめるとは何ともおトクだ。

温泉スタンド

ここの道の駅は今年の4月にリニューアルオープンしたばかり。以前はお店などもなかったらしいが、特産品販売や飲食店もできている。

新しくできた「そば処吉兆」で昼食。
券売機で食券を購入するカジュアルな飲食店だが、出雲そばのメニューもあり、気軽に入るにはちょうど良い。せっかくなので割子そばを食べてみることにした。780円。

自販機で食券を買ってテーブル着く。食べ方の説明書きがセットされているが、料理を運んできてくれた係の方が丁寧に説明してくれた。

薬味はかつおぶし、ネギ、海苔、紅葉おろし。
三段重ねになっていて、上の段から薬味とつゆを入れて食べ、残りのつゆを2枚目にかけ、1枚目の器を一番下に重ねる。
2枚目を食べ終わったら同じくつゆの残りを3枚目にかけ、2枚目の器を一番下に。
3枚目を食べたら、最後につゆをそば湯で割って飲む。

割子そば

割子そばの「割子(わりご)」とは、この三段重ねの器のこと。
普通は平皿で提供される冷蕎麦をどうしてわざわざ三段に分けているのだろう・・・と思ったが、
この割子そばというのは野外で蕎麦を食べる際の弁当箱だったのだそうだ。
あまり弁当向きとは言えなさそうな「そば」を持ち出すための工夫だとすると、つゆを上から下へ無駄なく再利用していくのも頷ける。

右に左に宍道湖をのぞむ北松江線

電鉄出雲大社前 1452 → 川跡 1503 /大社線 普通 川跡行

一畑電車 7004号
川跡までの短い間のお付き合いとなった車両は、デハ7004の1両編成。
3ドアの車両だが、真ん中のドアは開かない。そして、そこにしまねっこが陣取っている。

 

車内にしまねっこが鎮座している

川跡 1505 → 松江しんじ湖温泉 1553 /北松江線 普通 松江しんじ湖温泉行
7002号の1両編成。見渡すとこちらにもしまねっこが乗っていた。

松江しんじ湖温泉行も国内外の観光客で一杯だ。
進行方向に向かって左側に席を得た。
宍道湖は右手だが、席が埋まっているのでちょっと背伸びして遠巻きに眺める。

一畑口駅 ホーム

一畑駅で、スイッチバック。進行方向が変わり、宍道湖がこちら側の車窓に移る。

車窓から見る宍道湖

ふと見ると湖が近い。

秋鹿町駅では木造ベンチのあるホームから宍道湖が見える。

秋鹿町駅 ホーム

松江しんじ湖温泉駅着。

松江しんじ湖温泉駅 駅舎

これまたガラス張りの近代的な駅で驚く。

ここで一畑電車の完乗は達成。あとは、サンライズ出雲に乗るために出雲市まで戻る。
サンライズ出雲は松江も通るから松江から乗ってもいいけれど、初めて乗るので始発駅から乗りたかった。

そうすると松江ではあまりゆっくりする時間はない。折り返し、出雲市方面行きの発車は16:38。

足湯
駅舎の外に足湯があったので浸からせていただく。
かなり熱めのお湯で、足が真っ赤になった。

(2019.7.22)