宇高航路乗船記
高速バスで岡山駅西口に着いた。
昨日、東京を発つ時に激しく降っていた雨が嘘のように晴れている。
さすが晴れの国だ。
岡山から宇野行きの列車に乗って、8:25宇野着。
アートな駅舎を出ると、港はもうすぐそこだ。
まず見えてくるのが、四国汽船の直島行乗り場。
その向こうが、四国フェリーの乗り場。
宇高航路は、子会社の四国急行フェリーが運航している。
宇高航路はもともと、1910年に鉄道省が運航を開始した「宇高連絡船」が始まり。
以後、民間のフェリー会社も3社が参入したが、瀬戸大橋、明石海峡大橋の開通、そして高速道路の大幅値下げで利用者が減少し、撤退・減便を余儀なくされていた。
最後まで残った四国急行フェリーも、今年12月15日を最後に宇野―高松間の運行を休止することを発表。109年の歴史に幕を下ろすこととなった。
フェリーターミナルに近づくにつれ、人でごった返しているのが見えてくる。
建物内に入ると、窓口にも券売機にも長い列ができていた。
これから乗る「第一しょうどしま丸」。
乗り込んで、出航前に売店を覗く。昨晩から何も食べていない。
うどんが4種。
瀬戸内っぽいメニューということで、「わかとろうどん」をチョイスしてみた。
「わかとろ」とは、「わかめ+とろろ昆布」のことだ。
この麺の感じで何となく想像がつくけれど、特段に美味しい!というものではない。
だけど何だろう・・・船上の雰囲気が最大の調味料になっている。
乗ったらまずうどん、という気分になる。そして多分、蕎麦ではダメだ。
駅では蕎麦食べるけど船ではうどん一択だ。何故なのか。
そして船内探検。
これらの写真は下船時に撮影したもので、実際はこの時点で満席状態。
所在なくウロウロしながら座席を観察した。
船室中央には4人掛けのソファ。
前方のテレビといい、待合室のような雰囲気だ。
左右両端の座席はリクライニングシート。背面網ポケット付き。ここは列車やバスの車内のようだ。
そして一画にサロンみたいなスペース。
後部にはカーペットスペースがある。
それぞれのゾーンが独立して個性を主張している。なんと統一感のないことか。
出航に合わせて、デッキへ。
船の階段はなぜラグジュアリーな感じなのか。
デッキも混んでいて居場所がないが、何とかポジション確保。
9:15 宇野港発
宇野港を出ると船は大きく旋回。隣は四国汽船の「せと」と「なおしま」。
デッキをウロウロしながらひたすら瀬戸内海の風に吹かれる。
下の船室も満席、デッキも人で一杯。
土曜だからか、ファミリーが中心だ。三世代で来ているご家族も多い。
じいちゃんが生まれる前に開かれた航路。父ちゃんが子供の頃には、一日150往復もの船が行き交っていた航路。それぞれの思い出を乗せて、船は走る。
空と海との境目に吸い込まれそうな瀬戸内ブルー。
近づいては遠ざかる島を眺め、遠くの船を数える。
遠くに見えていた高松港の桟橋がグングン近づいてきた。
ふと現実に戻る。65分のクルーズがクライマックスを迎える。
10:20 高松港着。
快晴。
美しく整備された港に迎えられて、船をあとにする。センチメンタルな気持ちがちょっと和らぐ。
第一しょうどしま丸を振り返る。
またどこかの航路で、お世話になることがあるのかな。
フェリーターミナル内を散策。このカウンターも見納め。
再び外に出ると、眩しいほど青い世界が広がる。
土曜の昼前。
今からあそこへ行こう、あれを見ようと計画を立てていたのに、つい足を止めてしまう。
海と空と、行き交う白い船を眺める。ゆっくりと時間が過ぎてゆく。
(2019.11.23)